THE PERIDOCTUS
第3章

別れの時

来る日も来る日も世話をし続けたおかげで、幼かった紫の生き物はすっかり成長し、一人前になった。どんどん責任感が強くなるペリドットを、人間は頼もしく思っていた。これなら、もう1匹でも生きていけるだろう。そして、もしかしたら、本当にひとり立ちしてしまうのかもしれない。ある夜、人間は焚き火のそばで別れを想像して涙を流した。それは考えるだけでも辛いことだった。

キーは子孫を残し、焚き火に集った他の人間たちが彼らの世話を引き受けた。こうして、喜びと好奇心は森じゅうに広がり、ペリドットの数もたくさん増えた。人間たちは、すみかをさらに外の世界へと広げていかねばならなかった。彼らの住む場所には木や川、植物や鳥が増え、人間もペリドットも自由に歩き回り、さらに多くの美しい景色を楽しめるようになった。

しかし、キーはこの新しい美しさを、他の者たちほどには楽しめなかった。自由に歩き回れることに感謝しながらも、どこか満たされない思いを抱いていたのだ。

ここから先は、紫の生き物の子孫が私に教えてくれたことだ。これはペリドットに伝わる伝説である。そして、伝説というものには真実と誇張が同時に含まれる。解釈は読者に委ねることにしよう。

ある日、キーと親友である友人が青いトマトを収穫していた時、キーはふと立ち止まってうなだれた。キーは眉をひそめ、人間が声をかけても、最初は反応しなかった。「どうしたんだい、キー?」人間は心配のあまり、言葉でというより、顔をしかめてたずねた。

ペリドットが目だけで気持ちを表すことができたのなら、キーの目が語っていたことはこうだと、人間は思った。

「あなたは大好きな親友だよ。ずっとそばにいてくれてありがとう。この世界で生きていくための最初の一歩を助けてくれてありがとう。食べ物を採ることや、体を暖かくすること、仲間を作り、自分の家族を育てることを教えてくれてありがとう。すべてのことに感謝してもしきれない。でも、もうあなたの元を去る時が来たみたいだ。あなたを嫌いになったわけでも、信頼できなくなったわけでもない。ただ、心を駆り立てる種の本能に抗えなくなってしまったんだ。自分だけではなく、これから成長するペリドットたちもみんな、大人になるとそれぞれ人間の親友と別れて、新しいすみかに行くことになる。本当に悲しいけれど、あなたは親友だから、言わなくちゃいけない。これでお別れだということを。どうか、わかってほしい」

人間にはわからなかった。人間にはわからないことがたくさんあった。彼は最後に紫色の友人のお腹をなでてやり、両手を広げた。キーも手を広げ、ふたりは悲しい目でうつむきながら、最後にもう一度抱き合った。人間が腕を緩めると、紫の生き物は離れていき、誰も入ったことのない森に向かい、深呼吸をすると進んでいった。

人間は、親友が転びでもしないかと見守っていた。もし転んだら、助け起こしてやろうと思っていたのだ。もし木の枝がキーの頭に落ちたら、駆けつけて取ってやろうと思い見守っていた。キーが最後にもう一度お腹をなでてほしがったら、思い切りなでて笑わせてやろうと思っていた。しかし、悲しいことに、そんなことはなかった。

草木の緑の中で目を引く紫の尻尾は、ペリドットが先へ進むにつれてどんどん小さくなっていった。そして、日差しが弱まり、夕闇が迫ると、ついに紫の生き物の姿はどこにも見えなくなった。

その時、人間の背後からガサガサと音がした。振り向くと、それはキーが最後に残していった子どもだった。いつもはしゃぎまわっている白とオレンジのモコモコしたその子は、教えられたとおりに青いトマトを採っていたのだ。突然の別れに目を潤ませながらも、人間は新たな使命感を持ってその子に向かって歩き出した。たとえ今日からでも、自分以外の誰かと共に新たな日々を生きる準備はできていた。

この記事をシェア